千葉県立中央図書館の保存活用設計提案(千葉工業大学大学院建築学専攻:2023年度 建築設計保存改修特論)/ 課題概要と2023年度の傾向

4年目になりましたが、2023年度も千葉工業大学大学院建築学専攻「建築保存改修設計特論」にて千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題に取り組んで参りました。

全13週の授業スケジュールを終えて、2023年度の最終成果がまとまりました。

課題概要は過年度と同様で、2019年11月のワークショップを通じてまとめられた7つの活用方法を基に過去最多となります履修学生23名を3~4名ずつ下記7チームに分けて千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題に取り組みました。

Aチーム:アートスペース (建築の魅力を活かした「アートスペース」としての活用)

Bチーム:ライブラリー (あえて「ライブラリー」として活用)

Cチーム:コンバージョン (機能を挿入した「コンバージョン」としての活用)

Dチーム:ワークスペース (一時的な使用となる「ワークスペース」としての活用)

Eチーム:アタッチスペース (近隣施設の「アタッチスペース」としての活用)

Fチーム:レガシー (千葉文化の森の「レガシー」としての活用(プレグリッドシステムの架構を保存))

Gチーム:レンタルスペース (一定期間の借用となる「レンタルスペース」としての活用)


例年と同様にまずは全体的な傾向を述べておきたいと思います。

2023年度は全体を通じて、ややレトリックに近いストーリーからコンセプトを固め、これに基づいて保存活用設計提案にアプローチする観念的な傾向があり、これまでの学年と印象を違える点で興味深いものでした。大きな視座から臨むであったり、発想の転換で価値観や見方を変えようとするスタンスは、大学院生として必要な資質だろうと思います。

一方で、2022年度に目立ったエスプラナードとの関係性に着目する傾向はあまり見られず、千葉県立中央図書館の建築を自らの作品性を高めるのに積極的に活かそうとするのも控えめな印象を見受けました。かといって既存建築の継承を徹底するスタンスかというとそうとも言い切れず…総じて既存のコンテクストに与してデザイン・設計に取り組むことが覚束ない、そのように感じられるところでした。

チーム編成においても2023年度は同じ研究室の学生でかたまる傾向が多かったことも気になりました。ただ、近しい間柄だから設計・提案がスムーズに進むかというと必ずしもそうとは限らなく、協働でもって設計にあたるチームビルディングに例年より苦心している印象を受けました…学部生の大半を新型コロナウィルスの影響下で過ごさざるを得なかった学年ですので、そうした背景によるものかもしれません。

こうした傾向が認められた要因の1つに千葉県立中央図書館の重厚な造形、暗く閉鎖的と映る空間(特に「洞窟的」と表したチームがあり印象的でした)を構成する理念をネガティブに捉えていることがありそうに見受けました。つまりマイナスからのスタートといえて、千葉県立中央図書館の建築の保存継承に臨むモチベーションが醸成されるまでに時間を要したと見えて…このことは課題出題者としてリードが十分でなかったことによるものでしょうから大いに反省するところです(最終的に履修学生はみなさん千葉県立中央図書館の建築がもつ意味は理解してくれたように見受けました)

こうしたネガティブな印象をもつ傾向は、過去の学年でも垣間見られたことではありましたが、ここにきて明らかなものと認められるに及んだように思いました。このある種のジェネレーションギャップが潜在することは、保存継承という行為が後世との関係性を抜きにして考えられない側面からも少なからぬ課題として、乗り越えるべきものとなっていきそうな…そんな予感を抱かせるところでもありました。

全体の傾向はこのくらいとして、上記の各チームそれぞれがまとめた「千葉県立中央図書館の保存活用設計提案」の内容とリンクさせていますので、これに続いて各チームの提案内容もご覧いただければ幸いです。

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