千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2023年度 / Fチーム:レガシー

千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2023年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるFチーム:レガシーの提案内容です。

課題概要と2023年度の傾向についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。



[ 保存活用設計提案の概要 ]

レガシーをテーマにしたFチームは、中央部分をプレグリッドシステムの空間をそのまま継承し、西側を地域住民の活動に資するオープンスペース、東側をアート作品の展示場所(アートスペース)として大きく3つの性格をもつ空間を分けて形づくることでレガシーという難しいテーマへの回答を講じました。

Fチームは造形力に優れたメンバーで構成されたこともあって、中央部分を隔て、これを強調するに資するセラミックタイルによる「モザイクスクリーン」のような大壁面、アートスペースに展示空間を兼ねるコの字型をした耐震壁、3つのブロックを貫入してつなぐ光化学フィルムでカラーリングを施したチューブ形をした通路など、各所にコンテンポラリーアートを思わせる造形をもってアプローチし、彼らが「洞窟的」と表したプレグリッドシステムの重厚さに相克する新たな空間性の獲得を試みました。


[ 総 評 ]

機能の挿入に依らずに保存を講じる「変化球」的なテーマがレガシーです。いわゆるモダニズム建築の原理 ― プログラムによって建築を構成する ― をあえて封じるという大きな制約を伴う設計条件は、代々の学生が頭を悩ましてきたように今年度もこれにあたったFチームのメンバーを大いに苦しませるところとなりました。

検討途中では、設計が停滞してしまう様子も見受けましたが、最終的にややパワープレイとも映る手法とスタンス ― レガシーは、外部との関係性からストーリーを別に構築しないとならないため、テーマの性格上パワープレイを採る必要が多分にある ― で、最終的に着地させたことに、やはり力のあるチームであることを実感しましたし、このことは褒められてよいと思いました。

Fチームの提案から、造形のもつ雄弁さを再確認するところではありましたが、プロジェクトの実現性を高めるにはプロセスの透明性とその言語化が必要とも感じました。実際のプロジェクトではこのほかにも乗り越えないとならない強大な壁 ― 費用とコストパフォーマンス(さらに工期も) ― が立ちはだかりますし、建築の専門家でない方とも方向性を共有しないとなりませんから…その視点から見ると、どうしても踏み込み切れていない側面があって、そのことがリアリティのある提案にはなかなか及びにくい側面を示しているように思います。

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