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千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2021年度 / Dチーム:レガシー

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千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2021年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるDチーム:レガシーの提案内容です。 課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずは コチラ を参照いただければと思います。 [ 保存活用設計提案の概要 ] レガシーを保存活用設計提案のテーマとするDチームは、千葉県立中央図書館の躯体を千葉県文化会館への新たなアプローチとなる大階段を覆うフレームとし、これに西棟の北西部分に「Book&Cafe」、書庫棟を多目的スペースへと転じさせることで千葉文化の森の魅力を高める装置とした提案です。 千葉文化の森との親和性を高めるための造形操作として、プレグリッド・システムとエスプラナードのボキャブラリーから造形操作を抽出し、プレグリッド・システムのグリッドや格子梁の中空部分に植栽を植えて千葉県立中央図書館の建築をランドスケープに近づけるための操作を行うことで、新たなエスプラナードと千葉文化の森の創出を目指しています。 [ 総 評 ] 用・強・美 ー 建築の3大要素に挙げられるように「用」、すなわち機能こそは建築を建築たらしめる本質の1つとなるものですが、レガシーの保存活用設計提案は、その本質たる機能を剥奪した上で保存活用を考えなくてはならないという命題を抱えています。 Dチームの保存活用設計提案では、検討初期からエスプラナードの拡幅ないし新たなエスプラナードの創出という、千葉県立中央図書館の保存活用を超えて千葉文化の森にまで広げるという視座に立ち、千葉県文化会館へのアプローチとなるエスプラナードの空間的魅力を高める方針を設定するものでした。 その親和性を高める造形操作として、プレグリッド・システムの中空部分に屋上緑化を設えるというのは面白い着眼点で、千葉県立中央図書館の躯体をランドスケープに近づけるものであったと思います。そして何より千葉県立中央図書館の躯体を大きな半屋外の屋根として見立て、大階段を新設して鮮やかな空間演出を図り、新たな風景を創出した設計は美事でした。実際に建ち上がった時にここを通過してみたい欲求が大いに刺激される点で、最終形態のイメージが強固に築けていたのだと思います。 大階段を新設することで既存のエスプラナードとの2つの階段が併設されることになり、東西軸がより顕著となる形

千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2021年度 / Cチーム:コンバージョン

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千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2021年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるCチーム:コンバージョンの提案内容です。 課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずは コチラ を参照いただければと思います。 [ 保存活用設計提案の概要 ] Cチームの保存活用設計提案のテーマはコンバージョンですが、設計検討の過程で大きく路線を違えていく形になりました。その経過は「総評」でふれるものとして、保存活用設計提案の概要については、プレゼンシートに記載された宣言ともいえるテキストを引用するものとしたいと思います。 ----------------------------------------- 我々の設計はある種のスぺキュラティブデザインである。 黒川紀章の「中銀カプセルタワービル」や、前川國男の「東京海上日動ビル」など、名建築が次々と取り壊されようとしている現代の流れに対して、ただその建築の重要性を唱え、従来通りの保存を提案するだけでは、その建築を後世に守り抜くことが難しいのかもしれない。 そのため、今回の設計では意匠系研究室の3人が集まったということも斟酌し、千葉県立中央図書館を「保存の対象」であると同時に「純粋な素材」として捉え、空間的な体験価値を再度高めるような操作に焦点を絞り設計をおこなった。 設計において手がかりとなりうる、コンテクスト、導線、環境、プログラムから建築を組み立てるのではなく、千葉県立中央図書館の空間のみにフォーカスして行う設計は、掴みどころのない意思決定の連続を強いられた。 しかし、新旧のコントラストやグリッドの演出など、この建築だからこそ出来る空間体験の付加価値を意匠的な操作によって提示することで、日本の保存改修事例のバリエーションが一つでも増え、より多くの歴史的価値のある建築が後世に残せれば幸いである。 ----------------------------------------- [ 総 評 ] 千葉県立中央図書館は、従前の用途である図書館としての活用が継続出来ない以上、新たな活用方法を検討しなければならないのが基本路線であって、多かれ少なかれ他のテーマもコンバージョンという性格をもっています。つまりは、最も汎用的な性格をもつのがコンバージョンというテーマであるということで

千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2021年度 / Bチーム:アタッチスペース

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千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2021年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるBチーム:アタッチペースの提案内容です。 課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずは コチラ を参照いただければと思います。 [ 保存活用設計提案の概要 ] アタッチスペースを保存活用のテーマとしたBチームは、近隣施設に不足する機能のリサーチより千葉県文化会館、公民館、千葉大学のそれぞれに欠けている機能を充足させる提案を行いました。 大きくは西棟と東棟に二分して、西棟にブックカフェを計画することで周辺に少ない食事や自習を出来るスペースを充足し、東棟に展示施設や会議室等の貸しスペースを計画するという内容です。 さらに耐震強度が極端に脆弱として判定されている中央棟のプレグリッド・システムの架構を取り除き、ここにガラスの大屋根を新たに架けることで強度不足を解消し、かつ東西軸の強い既存の建築に対して南北方向の新たな軸線を挿入して機能向上と新たな魅力づくりに資するものとして計画しています。 また、環境・設備系のメンバーがいたことで、具体的な設備計画にまで提案が及べていることも他チームにない特色となって提案のリアリティを高めることに結びつくものでした。 [ 総 評 ] Bチームは綿密な計画の検討を重ね、確実に提案内容を詰めていったという堅実な計画性をもつことにチームカラーが如実に表れた提案となりました。 千葉県立中央図書館において、意匠や構造に対して存在感が薄く見られがちな設備について裏付けを踏まえながら設備計画までを検討出来たことは素晴らしく、大学院生の課題らしい最終成果になり得たと思います。一方で、ややアクティブな傾向も強く、とりわけ近年の建築に強く求められるパッシブひいてはサスティナブルな環境設計という側面にもう少し踏み込めるとよかったかなとも思いましたが…これは高望みかもしれません。 緻密な計画性は素晴らしいのですが、ストック活用の傾向が強く、千葉県立中央図書館のもつ空間性を活かすという点にはやや不十分さが認められ、魅力的な空間をつくるイメージには物足りなさを抱くところでもありました。

千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2021年度 / Aチーム:レンタルスペース

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千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2021年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるAチーム:レンタルペースの提案内容です。 課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずは コチラ を参照いただければと思います。 [ 保存活用設計提案の概要 ] Aチームは、レンタルスペースによる保存活用をテーマとして、活用され続けられる持続可能性をもつ建築の実現を目指して提案が行われました。 内包されるレンタルスペースには、多目的ホール・大会議室やFabラボといった地域住民向けの用途に加えて、2021年度はオフィススペースのチームがなかったことも相まって、昨今のリモートワークやノマドワーカーの需要の高まりを見込んでオフィススペースも合わせて計画しています。 こうした必要機能の計画と共にAチームの提案では、千葉県立中央図書館の外観を保存範囲として定めて、これを守るための補強を内部に集約させ、かつ事業計画の段階的な進捗と改修工事によって使用されない期間を設けないようにするために3期工事に分けて改修していくことで持続可能である状態を実現させようとしたリアリティのある提案でした。 [ 総 評 ] Aチームの提案は、千葉県立中央図書館の建築へのリスペクトが徹底された4チームの中で最も歴史的建造物の保存再生に軸足を置いた提案となりました。これはチームに千葉県立中央図書館を幼少期から知るメンバーがいたことも大きい要因だったと思います。 保存手法は、課題がスタートしたタイミングで『新建築』に掲載された富岡製糸場西置繭所に採られた「ハウス・イン・ハウス」の方法をモティーフにして、千葉県立中央図書館内部に鉄骨造のボックスを内包させる耐震補強を加えています。 これも単なる模倣ではなく、プレグリッド・システムの造形的な十字柱の箇所にはこれをガラスで囲って照明を備えることで、千葉県立中央図書館の歴史的価値を伝える象徴として内部空間に資するものとして扱っています。 歴史的建造物の保存改修は補強部材が露出してしまうことで、多かれ少なかれ見えてしまう変化との折り合いをつけることが求められるわけですが、付加した要素をもって空間の向上を目指しているところに保存改修方法として高い完成度をもっており、かつリアリティのある改修設計にまで至っていることにかえって驚か

千葉県立中央図書館の保存活用設計提案(千葉工業大学大学院建築学専攻:2021年度 建築設計保存改修特論)/ 課題概要と経過説明

昨年度に続いて千葉工業大学大学院建築学専攻「建築保存改修設計特論」にて千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題に取り組んで参りました。 先頃、全13週の授業スケジュールを終えて、2021年度の最終成果がまとまった次第です。 課題概要は昨年度と同様の方針で、2019年11月に行ってきた ワークショップ を通じてまとめることが出来た7つの活用方法を基に履修学生12名を3名ずつ下記の4チームに分けて千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題に取り組みました。 Aチーム:レンタルスペース (一定期間の借用となる「レンタルスペース」としての活用) Bチーム:アタッチスペース (近隣施設の「アタッチスペース」としての活用) Cチーム:コンバージョン (機能を挿入した「コンバージョン」としての活用) Dチーム:レガシー (千葉文化の森の「レガシー」としての活用(プレグリッドシステムの架構を保存)) ※各チームのまとめた「千葉県立中央図書館の保存活用設計提案」の内容とリンクさせていますので、ぜひご覧ください。 2021年度も引き続き新型コロナウィルス感染拡大の情勢は予断を許さない状況が続きましたが、千葉工業大学では感染対策の徹底を前提に対面授業をもって実施することができました。 第01回(4/13) ガイダンス・課題説明【オンデマンド授業】 第02回(4/20) チーム分け 第03回(4/27) 千葉県立中央図書館の耐震診断結果・歴史的建造物の保存範囲 【オンデマンド授業】   第04回(5/11) エスキス① 第05回(5/18) エスキス② 第06回(5/25) 中間発表 第07回(6/1) エスキス③ 第08回(6/8) エスキス④ 第09回(6/15) エスキス⑤ 第10回(6/22) エスキス⑥ 第11回(6/29) エスキス⑦ 第12回(7/6) エスキス⑧ 第13回(7/13) 最終成果発表会 2021年度は4チーム構成と昨年度に比べれば少数となりましたが、それぞれが選択したテーマ以上に各チームのカラーが大きく違うところとなり、かつ昨年度を上回る充実した内容の提案がまとまったと振り返る次第です。 これは4チームで あったことで各回授業で全チームを対象に対面でのエスキスを行うことができ、さらにはエスキスの回数も昨年度より2回純増していて、そして 何よりも昨年度(202