千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2023年度 / Bチーム:ライブラリー
千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2023年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるBチーム:ライブラリーの提案内容です。
課題概要と2023年度の傾向についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。
[ 保存活用設計提案の概要 ]
千葉県立中央図書館の建築が有する「パワー」が地域住民との心的距離感の背景にあるという捉え方を基に、新聞閲覧コーナーなどの市民の日常生活に近い機能はそのまま残し、さらに図書館の記憶を継承する本棚(図書)のシェア(個人・団体)、そして工房と農園という個人レベルのアクティビティの集積と共にこれらをグラデーションをイメージして緩やかにつなぐことをもって各種プログラムを配置する提案としました。
[ 総 評 ]
印象的であったのは、千葉県立中央図書館のもつフィジカルならびにメンタリティに圧迫される感を抱くという言葉でした。誤解を恐れず言い換えれば、一種のハラスメントに近いネガティブな感覚をもたれたということです。
千葉県立中央図書館をはじめとした高度経済成長期に建てられた建築の数々に今の時代には成し得難いエネルギッシュさを感じ、これを漠然と「美しい時代」と捉えてきていたので…保存の是非に根差した本質を突かれたように思われて(自省の意味も含めて)非常に印象的なチームでした。
その「パワー」を中和するために、そして市民の愛着を構築するために個人レベルでの行為を集積するというアプローチも明快で(ライブラリーは図書館でなくなる前提条件が関係してプログラムの設定が難しいテーマのため)、千葉県立中央図書館の建築(行為を集積する器)と適度な距離感をもつことが過度に手を加えない形となり、やや後ろ向きでありつつも結果的に保存と親和性をもつところに帰結するという、なかなかに言語化し難い絶妙なバランスの上に成り立つ保存改修設計の提案になったことも大変に興味深いところでした。
こういうスタンスで臨むとハードとソフトが別々となり、時に当該の既存建築にプログラムを据えることの意味が読み取れない提案になってしまう危うさもあったりするのですが、これが乖離しなかったことは千葉県立中央図書館の建築から個人の行為を集積する形態を導いて、造形上の関係性を基に形に落とし込んだことが成功の要因だったのでしょう。とりわけ書庫に螺旋状の書架を配する形態は(構造面をどうカバーするかはさておき)説得力のある造形で巧みだなと思わせるものでした。
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