千葉県立中央図書館の保存活用設計提案 / 課題概要と経過説明
春先から続いています新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあって、千葉県立中央図書館の保存活用も表立った活動が行い難く、ブログの更新もしばらく停滞していました。
そんな中、水面下(?)で進めてきたことがあり、その取り組みをブログでご報告させていただく次第です。
ワタクシ(藤木)は本務先である千葉工業大学の大学院建築学専攻にて「建築保存改修設計特論」という講義を受け持っています。
多く意匠系の学生(そもそも院生のほとんどが意匠系のため)が履修する本科目は、卒業研究が設計か論文かどちらか片方で取り組むことから論文を書いたことがない学生をターゲットとして、各自がチョイスした歴史的建造物について、登録文化財調査所見の執筆方法を下敷きにして建築を論理的に文章で表現するという課題に取り組んできました。
全国の大学と同じように2020年度前期はオンライン授業で行わねばならず、図書館など外部での文献調査が難しい事情を鑑み、そして千葉県立中央図書館の保存活動を細々と進めているという事情も相まって、講義の方針を大胆に変えて「千葉県立中央図書館の保存活用設計提案」の課題に取り組んでもらうことにしました(コチラの方が講義名にマッチした課題ともいえるというのは皮肉ですが)
「千葉県立中央図書館の保存活用設計提案」の課題を進めるにあたって、これまでの保存活動の取り組みを最大限活かす形としたい…ということで、2019年11月に行ったワークショップで提案された活用方法を整理して7つに分けられたことから、履修学生20名を7チームに分けてのグループ設計課題とし、さらに耐震診断報告書を資料として構造強度不足箇所も考慮しつつ保存活用設計提案を行うという課題内容を設定して進めました。
Aチーム:ワークスペース(一時的な使用となる「ワークスペース」としての活用)
Bチーム:レンタルスペース(一定期間の借用となる「レンタルスペース」としての活用)
Cチーム:アートスペース(建築の魅力を活かした「アートスペース」としての活用)
Dチーム:ライブラリー(あえて「ライブラリー」として活用)
Eチーム:アタッチスペース(近隣施設の「アタッチスペース」としての活用)
Fチーム:コンバージョン(機能を挿入した「コンバージョン」としての活用)
Gチーム:レガシー(千葉文化の森の「レガシー」としての活用(プレグリッドシステムの架構を保存))
※各チームのまとめた「千葉県立中央図書館の保存活用設計提案」の内容とリンクさせていますので、ぜひご覧いただき、多くの方より様々な視点からコメントをいただけると励みになります。
オンライン授業ということで、課題説明はオンデマンドによる動画配信形式、エスキスはWeb会議システム(ZOOM)を使用して進め、緊急事態宣言解除後に対面授業の実施が緩和されてからは対面でのエスキスも行うようにしました。
といっても授業時間で全チームと対面でのエスキスを行う十分な時間はないので、週当たり半分に分けて、事前に提出を受けたエスキス資料にペン入れをして返却する形式との併用でエスキスを進めるものとなりました。
第01回(5/19) ガイダンス・課題説明
第02回(5/26) チーム分け
第03回(6/2) 千葉県立中央図書館の耐震診断結果・歴史的建造物の保存範囲
第04回(6/9) エスキス①
第05回(6/16) エスキス②
第06回(6/23) 中間発表
第07回(6/30) エスキス③
第08回(7/7) エスキス④
第09回(7/14) エスキス⑤
第10回(7/21) エスキス⑥
第11回 (7/28) 学内成果発表会(7/27 18:00〆切:プレゼンシート)
第12回(8/8) 外部講評会@千葉県文化会館会議室(聖賢堂)
最終回となる8/8 (土) には、千葉県文化会館会議室(聖賢堂) にて下記の充実したゲストの先生方にご参加いただき外部講評会を開催することが出来ました。
・安達文宏(桑田建築設計事務所/日本建築学会千葉支所)
・磯田和明(磯田和明建築設計事務所/東京理科大学非常勤講師)
・市原嗣久(市原建築構造設計事務所/日本建築構造技術者協会・千葉代表)
・頴原澄子(千葉大学准教授/建築史家)
・多田脩二(多田脩二構造設計事務所/千葉工業大学准教授)
・寺川典秀(意匠院/日本建築学会千葉支所長)
・二階さちえ(ジャーナリスト)
・柳田富士男(アーキテック・パートナーズ一級建築士事務所/日本建築家協会・千葉副代表)
新型コロナウィルスの感染拡大の情勢が厳しい中でも実施を許可していただいた大学にも、そして感染のリスクが絶対にないと言い切れない中で、加えてボランティアでご参加いたただいたゲストの先生方にも感謝の念に尽きません。
各チームの提案内容はチームごとに分けて紹介していきたいと思いますが、大変充実した外部講評会となり、ゲストの先生方からも口々に参加してよかったという前向きな言葉を寄せていただけたのも、全ては履修学生のみなさんの頑張りのおかげに違いありません。
たかが大学の課題という見方もあるはずなのですが、各チーム共に熱心に取り組んでもらえたのは課題出題者冥利に尽きるものでした。オンライン授業で行うにあたって通常の対面授業より質が落ちるというようなことも聞くところでしたが、(一部対面形式を採用していたこともあるかもしれませんが)総合的に見て内容の伴った良い取り組みになったかなと振り返ります。
ではでは、これに続いて各チームの提案内容をご覧いただければ幸いです。
コメント
コメントを投稿