千葉県立中央図書館の保存活用設計提案 / Eチーム:アタッチスペース
千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるEチーム:アタッチペースの提案内容です。
課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。
[ 保存活用設計提案の概要 ]
周辺施設の機能を拡充する施設として活用を行うアタッチスペースが保存活用のテーマとなったEチームは、ちょうど施設再整備の検討を進めている千葉市立郷土博物館(千葉城)との本館・分館として千葉県立中央図書館の保存活用を行おうというアイディアでした。
岩手県立図書館(菊竹清訓設計 1967年)が盛岡市に移譲されて「もりおか歴史文化館」として活用されていることと対比をして必要機能の把握・整理を行い、これを基に保存活用設計を進めました。新設したコアで中央部分の格子梁の吊り補強・既存のカーテンウォールを耐震壁に改修・西側2階床・柱を減築する手法を使い分けた柔軟な耐震改修、さらに千葉県立中央図書館のみならず千葉市立郷土博物館までを一体として展示計画・施設計画の検討を行って綿密な保存活用の提案を行っています。
[ ゲストの講評(要点)]
・リサーチにより分館を検討中であった隣の郷土博物館の付属施設として転用することで、最も実現性の高い提案となった
・類似事例を含めてプログラムを詳細にリサーチ・分析したことで、提案が少し現状に寄りすぎている。もう少し時間的に長いスパンで考え、千葉市広域でのビジョンも掲げるなどの大胆な方策があっても良かった
・千葉市立郷土博物館(千葉城)も千葉文化の森を構成してきた歴史であり、これに着目したことは良い
・耐震診断報告書にある補強案とは異なった現実的に可能な耐震補強の方法を採っている
・模擬城である千葉市立郷土博物館が地域の歴史を伝える施設であることに違和感を覚えているので、全面的に千葉県立中央図書館を千葉市立郷土博物館にしてしまう方が良いのではないか(公共施設の床面積を増やすことは難しい社会情勢もあるため)
・(他案でも見られないが)段差解消などユニバーサルデザインの計画についても提案が欲しかった
・千葉県立中央図書館と千葉市立郷土博物館の間をどのように繋いでアクセスさせるかという外部のデザインも必要だろう
プレゼンシートによく表れているが、徹底したリサーチにより論理的に破綻のない説得力の高い保存活用設計提案を行ったのがEチームでした。千葉県文化会館の付属施設になるくらいのイメージで設計指導を進めていましたが、毎週のエスキスの度に新たな、それも有用なデータを見出してアイディアを堅固に積み重ねていったことには驚かされるばかりでした。
重厚なデータ・論理に裏付けされた緻密な提案である一方で、充実しすぎた提案内容ゆえに表現が細やかすぎたためにプレゼンシートをはじめプレゼンテーションを明快に理解できるように成果物をまとめられたかという点では、まだまだ改善の余地があるように感じるところです。
Eチームもまた千葉県立中央図書館を歴史的建造物として保存再生して継承することを重んじていたために建築そのものを大きく変えないスタンスであったことは、重厚な計画で構成されているだけに検討が及ばなかったように映ってしまうところもあったかなと思いました。
デザイナーというよりはプランナーに近い提案ですが、こうしたスタンスの違いがチームごとのキャラクターとなって表れていることは面白いところでもあります。
みなさんにはEチーム:アタッチスペースの保存活用設計提案はどのように映りましたでしょうか?ぜひコメントをお寄せいただければ幸いです。
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