千葉県立中央図書館の保存活用設計提案 / Fチーム:コンバージョン

千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるFチーム:コンバージョンの提案内容です。

課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。



[ 保存活用設計提案の概要 ]

千葉大学医学部をはじめ近隣に大学キャンパスが多いことから潜在的なニーズを汲み取り、千葉大学学生寮のリサーチを基に「食堂付きシェアハウス」として千葉県立中央図書館の保存活用を行うアイディアです。

プレグリッド・システムによるグリッドサイズを基準にした住居ユニットを並べ、それらの間を共有スペースとし、書庫をはじめとした現場打ち鉄筋コンクリート造の箇所を解体してトイレ・浴室・キッチンを新設しました。

プレグリッド・システム部分は図書館から用途が変わることで積載荷重を低減し、B1Fないし1Fの現場打ち鉄筋コンクリート造部分は耐震壁と格子ブレース・八の字ブレースによる耐震補強を計画しており、千葉県立中央図書館を構成する意匠・構造・設備をよく理解した提案となっているといえます。特に1階東側の書庫部分に食堂を配して、その前面の芝生広場を掘り下げてサンクンテラスへと改変して、地域に開く新たな魅力づくりにも資するものともしています。


[ ゲストの講評(要点)]

・学生が多い地域特性に着目して、リサーチから「食堂付きシェアハウス」としてコンバージョンするという提案は明快

・図書館を居住施設に改修するのは、採光通風条件の整わない長期滞在の難しい部分が多くなりそうな懸念が拭えない。大胆な減築によって居住環境を構築する方法もあったかもしれない。

・個室が「カプセル」を挿入するコンセプトは明快だが、それであればメタボリズムの理念を適用してプレゼンテーションすると良かった

・Bチームの行っていた「透明のコア」を採用すると良さそう

・耐震診断報告書の耐震補強案と異なる方法で、かつ現実的な補強方法で計画されている。特に壁補強で統一されていることが良い

・千葉県立中央図書館の空間をシェアハウスの住民に専有させる計画はもったいない

・シェアハウスよりも宿泊施設の方が事業計画として良いだろう。インバウンドの効果も期待できる

・民間に譲渡する最も現実的な案である


近隣に大学が多い地域特性より早い段階でシェアハウスへとコンバージョンする方向性を決めて、とにかくスタートダッシュが早かったことが印象的でした。このあたりはコンバージョンが保存活用のテーマとして明快だったということもあったと思いますが、それだけに住居にコンバージョンすることが既定路線となってしまったことが後の難しさを生んでしまったところだったと思います。

宿泊施設へのコンバージョンの方が可能性があるという、前提を覆す講評が寄せられたことに端的に表れていますが、メタボリズムという世界的にも知られる建築理念が適用された名作に宿泊できることのニーズはありそうですし、成田空港との位置関係も考えればインバウンドも期待できるというのは確かに先生方のご指摘の通りであると思いました。

Fチームの設計上で苦心していたのは住居ユニットをどのように配置するかでした。活用を重んじるコンバージョンがテーマですから課題としては優先度の低い事項のようでしたが、住居が並ぶことでプレグリッド・システムの優れた内部空間の閉塞感が強くなり、千葉県立中央図書館に生活することの魅力を十分に享受できないように見えたところも惜しまれました。

住居配置の問題に加えて、千葉県立中央図書館は上層のプレグリッド・システムと下層のラーメン構造(現場打ち鉄筋コンクリート造)の柱・梁位置が直上に積層されていない構造形式になりますが、住居ユニットを挿入して構造補強に資するという計画を前提としていたために、これが成り立たないことがわかったために提案をまとめる上で苦心したところでした。

こうした難しさに直面したのも、他チームが閲覧室(プレグリッド・システム)のスペースをそのまま活用しようとしていたのに対して、Fチームの場合はシェアハウスという方針に従って内部に積極的に機能を挿入しようというスタンスを採ったことによるもので、千葉県立中央図書館の建築には特有の難しさがあることがわかったという意味では収穫の多い保存活用設計提案になったのではないかと思います。


さて、Fチーム:コンバージョンの保存活用設計提案について、みなさんにはどのように映りましたでしょうか?ぜひコメントをお寄せ願えれば嬉しいです。

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