千葉県立中央図書館の保存活用設計提案 / Dチーム:ライブラリー
千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるDチーム:ライブラリーの提案内容です。
なお、課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。
[ 保存活用設計提案の概要 ]
Dチームはライブラリーを保存活用のテーマとして、子ども・教育に特化させてデジタルライブラリーとして千葉県のデジタル教育促進に資する図書館を提案しました。加えて新たにカフェ・ショップ・シアタールーム・子どものためのアトリエ・託児所・ワークショップ・実験教室も内包するという計画です。
図書館としての建築的な機能については継承するものですが、デジタルライブラリーにすることで書架・図書の荷重と閉塞感を緩和すると共に、図書館にとって脇役となる書庫を大胆に活用し、躯体は残す一方で外壁のデッキプレートを木質パネル、斫り仕上げを左官仕上げに更新することで千葉県立中央図書館の全体的な機能向上を図り、魅力を高めようというアイディアでした。
[ ゲストの講評(要点)]
・築50年の図書館の時間的・空間的価値を残しながら、最先端のデジタル環境として再生するというハイブリッドのアイディアは、どこにもない新しい図書館が生まれる可能性がある
・現在の中央図書館の置かれている状況を的確に把握し、子どもの「教育」に特化した図書館として新しい価値を創造しようとする提案は素晴らしい。それを実現するために「書庫」に着目する視点も秀逸で、見たことのない本とこどもの空間が生まれることが期待できる
・躯体はそのまま残すが仕上げは大胆に更新して新たな価値を見出そうとする姿勢に大変共感を抱いた
・デジタル環境となることによる構造特性(物理的な荷重が減る等)や環境特性(望ましい光環境や温熱環境が変わる等)の更新にまで踏み込めると、より多角的な提案となったと思う
・斫り仕上げは職人の汗が染み込んだ仕上げであり、残して良いものだろう
・積載荷重と外壁重量の低減のみでは耐震補強としては十分ではない
・上部階を軽くし、書庫等は下部へ配置するとバランスが良くなる
・リアリティのあるgoodな提案
そのような中で、あえて「ライブラリー」として活用を提案するという、既存建築の機能には最も素直といえることに対して、今後の方向性には真っ向から対立することに向き合うともいえるものでした。
直訳すると図書館になりますが、ライブラリーには多彩・多様な考え方もできますから、Dチームの面々も「ライブラリー」のテーマに沿った活用方法の検討に多くの時間を必要としました。苦心の末にデジタルライブラリーというハードではなくソフトな手法でもって、ターゲットを子ども・教育に特化させるということで明快な活用方法に着地出来ました。
設計指導を行っている間は気が付かなかったことですが、外部講評において最新のコンテンツが歴史的な図書館で運営されるというコントラストへの好評が多数寄せられたことはDチームのアイディアの巧みさと面白さを的確に表現しているところのように思います。
活用方法にも見られる表と裏の関係性については、千葉県立中央図書館の保存手法においても特色が表れるものでした。すなわち書庫を改修して積極的に活用することで図書館というビルディングタイプにある表と裏の関係性を曖昧にしたというアプローチは見事だったと思います。
プレキャスト・プレストレストコンクリートになるプレグリッド・システムを採用した閲覧室部分に千葉県立中央図書館の学術的価値を見ていた立場では、現場打ち鉄筋コンクリート造の書庫は顧みるべき対象ではないと思っていましたので…自身にとって新しい発見になるものでもありました。
さて、みなさんにはDチーム:ライブラリーの保存活用設計提案はどのように映りましたでしょうか?ぜひコメントをいただければ幸いです。
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