千葉県立中央図書館の保存活用設計提案 / Cチーム:アートスペース
千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるCチーム:アートスペースの提案内容です。
なお、課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。
[ 保存活用設計提案の概要 ]
Cチームは近隣に所在する美術館のリサーチからこれらが欠くアーティストインレジデンス・インスタレーション作品展示・周辺学校の学生作品展示を内包するアートスペースを提案しました。
千葉県立中央図書館の建築がもつ造形美をアートスペースを彩る空間的魅力として活かすことをコンセプトにして、複数のアクセス動線を活かして内部空間にエスプラナードを挿入し、中央部分を逆アーチで吊り、展示空間のパーティションとして新たに加えた鉄骨による構造補強もまたアートスペースの魅力に寄与するデザインとして取り使うなど、建築への造形操作を積極的に行うことで、新たな千葉県立中央図書館の姿形を目指した提案となりました。
[ ゲストの講評(要点)]
・既存建築の構成を立体的に正確に把握した上での新しい動線計画や既存の建築を活かしたインテリアは、建築の特性を最大限に活かした秀逸な計画
・アクセスフリーなオープンなスペースは魅力的だが、管理やセキュリティの問題への対処が必要になる
・外部空間(千葉文化の森)に対しても積極的に提案があると、より一層に街との関係性が深まったのではないか
・大髙正人が目指した多様なアプローチをもつ建築的特徴を活かしているのは良い
・アートスペースの空間性が画一的な取り扱い方をしている印象を抱く
・大胆な構造補強の提案を試みているが、耐震補強性能を担保するまでには及べない
・周辺にある学校の発表の場として活用することは、市民が自由に活用するという三春交流館で実践した「大高の思想」に合致するもので評価できる
・千葉県立中央図書館を保存改修する上で、何を評価して保存し、何を改変・改造していくかという整理と提案が必要である
・重く・暗い表現をプレゼンテーションに採用したことは良いイメージに結びつき難い
周辺の美術館施設(千葉県立美術館・千葉市美術館など)をリサーチして、これらにないアートスペースとしての機能を盛り込んだ計画でした。ないものを機能として充足するというのは一見成立しているように見えますが、需要がないから既存施設に盛り込まれていないという見方もあって、その需要の可能性を追求した上で求められているアートスペースとして計画できたかという点は未知数であるというのが提案内容に抱く率直な感想です。
しかし、Cチームの提案の魅力は活用方法以上に千葉県立中央図書館の造形・空間の魅力を継承するために積極的にデザイン行為を行っていることで、耐震補強で加えたものですら意匠的性格を多分に持たせているという一貫したチームスタンスであると思います。
それは歴史的建造物の保存再生ともコンバージョンによる活用重視とも違った、大髙正人氏・木村俊彦氏の造形・空間を継承しつつ新たな魅力ある建築を創り上げようとする建築家としての創作的アプローチといえるもので、そういう意味ではCチームのメンバーが千葉県立中央図書館と真剣に向き合った結果がアートスペースとしての提案だったのかもしれません。
課題の成果物としては大いに褒められてよい作品だと思いますが、活用方法が担保されていることで表現も許容されるところがあると思いますので、現実的な保存活用設計提案としてはまだまだ検討の余地があるのかなと思います。
みなさんにはCチーム:アートスペースの保存活用設計提案はどのように映りますでしょうか?ぜひコメントをお寄せ願えれば嬉しいです。
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