千葉県立中央図書館の保存活用設計提案 / Gチーム:レガシー

千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるGチーム:レガシーの提案内容です。

課題概要と経過説明についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。



[ 保存活用設計提案の概要 ]

Gチームの保存活用のテーマは「レガシー」、つまり構造躯体だけを残した半外部空間として保存改修設計提案を行うという他チームにないアプローチによる提案を設計条件として課せられたチームでした。

その点をプレグリッド・システムが持つ架構形式を活かせるというキャラクターとして捉え、千葉文化の森ないし周辺地域の特性から駐車場・駐輪場(レンタサイクル)・ホーカー(屋台)という機能を内包させて活用すると共に格子梁のグリッドに角度を違えたシェルフを備えて、陰影による造形美の美しさを表現しようとする提案になりました。


[ ゲストの講評(要点)]

・一見機能の無い廃墟のようにも捉えられかねない懸念はありつつも、魅力的な屋外空間があればそこはいかようにでも活用できるという強い意思のようにも感じられ、それが魅力的なパースによって説得力を与えている

・「立体的な公園」として、豊かな緑と建築でつくられる魅力的な屋外空間の創出に徹する方が、都市における重要な提案となる可能性を思わせる

・構造体の美しさを活かした魅力的な提案

・植栽が絡むことでアンコール・ワットのような古代遺跡を思わせる風景になりそう

・ミストを噴出するなど暑い屋外を快適に過ごすための設備がほしい

・床を撤去し、積載荷重がなくなることで極端に建築の重量が軽減することから十分な耐震補強になる

・風雨等による経年劣化が進むので、コンクリートの中性化による修復を行い、保護被膜等の劣化の進行を低減するための措置が必要になる

・架構をレガシーとして残す提案であれば、架構の何を評価して、どう残すのかを整理できると良かった

・施設を残していくには維持保全の費用が必要なので、最低でもそれを担保する仕組みを用意したい


構造躯体だけを残した半外部空間が保存活用かどうかは議論のわかれるところで、自身の見解としては凍結保存に近く、厳密には保存活用ではないと考えています。そう思いながら、レガシーとして保存するテーマを設定したことは次のような理由がありました。

機能を失った建築は防犯等の観点から解体後の敷地利用を決めずに(解体費用がかかるのにも関わらず)解体に踏み切るケースが多いです。新国立競技場の新築は建設費の観点から大きく問題化したわけですが、あれも国立競技場を早々に解体してしまっていたために複雑化してしまった側面がありました。また、相応しい活用方法が決められないと保存を実現できないケースも多いです。いずれも「今」に大きく左右されているわけですが、そもそも保存は今のためでなく「未来」のために継承するものであって、そこに歪みが認められるところでないかと思います。

そこで千葉県立中央図書館の学術的価値を意味づけるプレグリッド・システムの架構のみだけでも緩やかに保存することで、具体的な活用方法がなくても残せるという方向性を打ち立てることが出来ればということと、海外では長く放置されていた空き建物が時間を経て価値が見直されて活用に至るケースがありますので、来たるべき時のために繋ぎとしての保存という在り方が考えられないかというところによって「レガシー」というテーマを設定しました。要するに壊されたら終わりなので、万全な状態でなくても優れた建築の命脈を後世に繋げれば…といういわば消極的な保存方法となるものともいえます。

デザイン・設計という営為は、何らかを付け加えていくことが基本です。「引き算の美学」とも言えるような付け加えないデザインというのは…なかなか難しかったのかなと思います。そういう意味で、いただいた講評にあった「立体的な公園」というのは鋭くかつ優れた指摘であると考えます。


さて、Gチーム:レガシーの保存活用設計提案について、みなさんにはどのように映りましたでしょうか?ぜひコメントをいただけましたら幸いです。

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