千葉県立中央図書館の保存活用設計提案(千葉工業大学大学院建築学専攻:2022年度 建築設計保存改修特論)/ 課題概要と2022年度の傾向

2020年度、2021年度に続いて千葉工業大学大学院建築学専攻「建築保存改修設計特論」にて千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題に取り組んで参りました。

このほど全13週の授業スケジュールを終えて、2022年度の最終成果がまとまりました。

課題概要は過年度と同様で、2019年11月のワークショップを通じてまとめられた7つの活用方法を基に履修学生18名を3名ずつ下記の6チームに分けて千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題に取り組みました。

Aチーム:アートスペース (建築の魅力を活かした「アートスペース」としての活用)

Bチーム:アタッチスペース (近隣施設の「アタッチスペース」としての活用)

Cチーム:レガシー (千葉文化の森の「レガシー」としての活用(プレグリッドシステムの架構を保存))

Dチーム:コンバージョン (機能を挿入した「コンバージョン」としての活用)

Eチーム:レンタルスペース (一定期間の借用となる「レンタルスペース」としての活用)

Fチーム:ライブラリー (あえて「ライブラリー」として活用)


先立って全体的な傾向を述べておきたいと思います。

2022年度は図書館に代わる新たなプログラムを充足して活用方法を提案するというよりは、千葉県立中央図書館の建築が持つポテンシャルの造形的追求という傾向が強く表れたように感じられました。

これはよく言えば、継承の意味を広く捉えた実験的なデザインの試みといえて、意匠系の大学院生が多く履修する講義としてはデザインの可能性を考える上で教育的意味はありましたが、一方で、保存活用の主意を踏まえた提案という面では、現実感が薄いものとして映る見え方もできそうかなという印象も残るところでした(社会性の高いプロジェクトの性格から保存改修を重んじたい建築史家の立場と、多く建築デザインを専攻する学生の創造性を育む教育者としての立場の相克は、個人の中では大きな課題です)

基本的には学生のやりたい方向を伸ばすという指導方針もあり、強く修正しなかった結果なのですが、何にオーセンティシティを見出し、これを未来にいかに繋げようかを思考した形が結実していると思えば、2020、21年度が多く千葉県立中央図書館そのものをいかに保存するかを取り組んでいたこととは、また異なる考え方を示すに及べているのかなとも思え、保存活用に向けた活動全体を俯瞰した上でこれもまた意味が認められる面もあるだろうと思います。

ただ、ポテンシャルの造形的追求という側面ゆえに提案も局所的に絞り込む傾向があり、意匠・構造・設備を総合的に見ようとする視点にいささか乏しくバランスを欠いた点は、惜しまれるところではありました。これは全て指導する側の力量不足によるものです。

さて、上記の各チームは、それぞれがまとめた「千葉県立中央図書館の保存活用設計提案」の内容とリンクさせていますので、これに続いて各チームの提案内容もご覧いただければ幸いです。

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