千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2022年度 / Fチーム:ライブラリー

千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2022年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるFチーム:ライブラリーの提案内容です。

課題概要と2022年度の傾向についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。



[ 保存活用設計提案の概要 ]

Fチームはライブラリーをテーマにしましたが、千葉県立中央図書館は新たな県立図書館が建てられることで図書館ではなくなることを前提にしますので、ここにどのようなライブラリーを計画するかという、まるで禅問答のようなつかみどころのない性格をもつテーマでもあります。

ここで提案されたのは、本を媒介にした知識との新たな出会いの場。来場者は書架から自由に書籍を持ってきて読むわけですが、これを使用後に書架には一定期間戻さないで、他の利用者が書架から本を持ってきて同じ場所を使用した時に元々置いていかれた本を手に取って、本を媒介にした図書館とは異なる空間体験を行いたいという提案でした。

この空間体験に資するのが、プレグリッド・システムの床パネルを全て抜いて、新たに館内に挿入した構造体によって、既存のプレグリッド・システムが机になり、書架になり、椅子になり‥‥と、多様な床レベルをもつ分節されながら一体化された建築形態で、それは明らかに千葉県立中央図書館を継承しながら、それでいて明らかに千葉県立中央図書館とは異なる建築空間が目指されたものでもありました。


[ 総 評 ]

ライブラリーをどのように解釈するかというテーマですが、Fチームが目指したのは「管理されない図書館」というような観念的なプログラムでした。これを民間で建築的な魅力を理解する財団によって活用することを前提に設計を展開するという‥‥ややパワープレイとも映るストーリーですが、ライブラリーというテーマそのものが捻くれた性格をもちますので、これくらい割り切った設定もありかなと思いました。

というのは、プレグリッド・システムの格子梁を空間装置としてダイナミックに置換するのは非常に魅力的で、それでいて革新的な保存改修設計提案の可能性が期待できると思ったところにありました。

ただ、その魅力に気づいていたかは疑わしい。既存のプレグリッド・システムに様々なレベルで纏わりつくスラブは十分に表現に及んでいないように映りますし、何より水平性の表現こそが重要であるところにガラスボックスで覆ってしまうという選択‥‥造形的ポテンシャルを追求しながら、最終的にポテンシャルの読み違えに至ってしまったように映るものでした。全体構成とディテールをどう繋ぐかという難しい性格をもつ課題ではありますが、結果的に大いなる不一致というように感じられたところは惜しまれました。

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