千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2022年度 / Aチーム:アートスペース

千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2022年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるAチーム:アートスペースの提案内容です。

課題概要と2022年度の傾向についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。



[ 保存活用設計提案の概要 ]

アートスペースをテーマとしたAチームは、まず近隣に所在する美術館のリサーチを行い、その上で活用を行うプログラムにレンタルアトリエを設定しました。

これにより千葉文化の森・千葉県文化会館の来訪者にアートとの接点をつくり、日常にアートが染み出すことを目標に、そのハブとして千葉県立中央図書館の既存建築を位置づけるという提案になりました。

書庫側に千葉県文化会館と繋ぐ新たなエスプラナードを設けて、来訪者を引き込むためのデザインとして耐震強度不足が明らかな西側部分と中央部分を解体して、一部プレグリッド・システムを千葉文化の森に点在させると共に、木材(格子梁)と鉄骨材(柱)でプレグリッド・システムのイメージを投影したパーゴラ状のものを展開させることで千葉文化の森全体の魅力に資するものとなるよう試みられています。

[ 総 評 ]

2022年度の傾向の1つに千葉文化の森のエスプラナードに注目するチームが多いことが挙げられて、Aチームの提案では、木材・鉄骨材でイメージを投影したパーゴラ状のものを展開させることで千葉文化の森の新たな風景を獲得しようとする提案でした。

プレグリッド・システムの重厚さに対して、木材・鉄骨材で軽やかな表現を採ってコントラストを示すという考え方は可能性を感じさせるのですが、木材の梁を単に積層させて井桁のように設えるであったり、木割が細くなる分、グリッドのサイズ検討に丁寧さが求められることであったりするところに十分に踏み込み切れていない面は否めないように思われました。

どうにも本質的に千葉県立中央図書館の建築としての美しさにネガティブなイメージをもたれており、これを払拭するまでには及べなかったことがアートスペースの提案として踏み込んでほしい点である、既存建築を美としてどう表現に資するかに相立ち向かうところに行き着かなかったところだったのかなと思われました。

構造強度が不足している西側部分・中央部分のプレグリッド・システムを解体するというのは、これを継承するという点で選択肢となるのは理解できます。ですが、こうした点を踏まえた時に、千葉県立中央図書館の建築美を掌る根幹を失わせるアプローチであるだけに、取り除いたままになってしまったのは、アートスペースとしての提案のポテンシャルを活かしきれていないようにも見えて惜しまれました。ここに本提案の顔となる新たな造形・表情が加味されていれば、もう少し印象も違えていた面もあるのかな‥‥と思ったりもします。

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