千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2022年度 / Eチーム:レンタルスペース

千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2022年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるEチーム:レンタルスペースの提案内容です。

課題概要と2022年度の傾向についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。



[ 保存活用設計提案の概要 ]

テーマ選定にあたっては希望されるもの上位3テーマを回答して、なるべく順位の高いものを優先して希望者をチームとして構成していくという形で決定するのですが、Eチームになった3名はいずれも第1希望が定員超過、第2希望同士でチームに出来るという流れでメンバーとなったチームです。

要するにテーマとなるレンタルスペースが第1希望でなかったことによるためか、これに相応しいプログラムがなかなか決められず、早々のうちに千葉県立中央図書館の建築形態を造形的に追及する方針へと転じ、強度不足部分のプレグリッド・システムは部分解体して周囲に散開させると共に開口部を全面的に取り除いて内部にエスプラナードを挿入させ、千葉文化の森に点在する主に円形の造形を抽出して千葉県立中央図書館内に散りばめた屋根下空間を形成するという提案になりました。


[ 総 評 ]

千葉県立中央図書館内に①複層的に形成されたエスプラナードを再置し、ここに②プレグリッド・システムの格子梁を周囲に散開させ、③千葉文化の森に点在している造形をパタンランゲージとして抽出して散りばめることで、大屋根の下に広がるエスプラナードとして空間を翻訳したという非常に明快なロジックを組み立てました。

幾度と千葉文化の森に足を運んでリサーチを重ねられたようで、地道なアプローチが実を結んだ提案だと思われました。その明快さの影響力は大きく、中間発表で内容を聞き及んだ他チームが千葉県立中央図書館の建築が持つポテンシャルの造形的追求というアプローチを採るに及び、2022年度の全体的な傾向はEチームの存在を抜きにして語れないほどでした。これが第2希望同士が集まったチームから発生したというところに設計指導の面白さがあるところです。

一方で俯瞰した立場からロジックに従って落とし込むというスタンスで臨んだために、どことなくパズルのような印象も残り、情緒のある豊かな内部空間が築けたかというといくらか疑問も残りました。レンタルスペースではあったのですが、全体的にはレガシーのテーマを彷彿とさせるところに着地したのも、スタートとゴールのギャップがあって設計のプロセスとしてはなかなかに興味深いものがあったように思います。

千葉県立中央図書館を保存するという点からは大幅に改変が及んでしまっていますが、継承のためのデザインという広い視点から見た時には1つの可能性を示唆しているように思われます。

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