千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2024年度 / コンバージョン

千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2024年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるコンバージョンの提案内容です。

課題概要と2024年度の傾向についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。


[ 保存活用設計提案の概要 ]

文教施設が建ち並ぶ「千葉文化の森」という敷地と、そして周囲が官庁街であるというコンテクストを読み取り、宿泊施設を伴う「青年自然の家」へとコンバージョンすることを提案しました。

西側のブロックにギャラリーと会議・研修室等を配置し、東側のブロックでは、そのプレグリッドシステムの特徴的な造形を活かした多目的スペースを設けました。中央部は内観を継承してホールとして取り扱い、宿泊機能(宿泊室、浴室、食堂など)を書庫内に収める計画としています。

多目的スペース(プレグリッドシステムで構築された東側ブロック)には、湾曲させた鋼板を挿入して補強すると共に、これで隔てられ外部となった箇所は床パネルを除いて格子梁を露出させ、まるで内外が反転するような造形性に富んだ空間としており、デザインにも与する耐震補強の提案も行っています。


[ 総 評 ]

プログラム選択の幅が広く、かえってこれが難しくもあるコンバージョンというテーマにおいて「青年自然の家」をチョイスされました。都市部でありながら、自然も多い「千葉文化の森」には、千葉県文化会館、千葉市立郷土博物館、千葉県庁(教育委員会)などが近隣に建つことから研修施設は十分にニーズが考えられるでしょう。

かねてから本課題においてホテルを提案することが散見され、これもまた1つの解法ともいえるものでありました。ホテルとして計画すると、宿泊客へのインセンティブのため、プレグリッドシステム内部に宿泊室を配して魅力を提供するものが多く、一方で空間的な差異の顕著な書庫をどのように利用するか悩ましく映るものを見てきました。

本提案では「青年自然の家」とすることで、宿泊施設のクオリティにプライオリティを求めなくても良いことで、北東側の書庫内にこれを収めて、全体的に現実的な提案になったように感じられました。

プレグリッドシステムに湾曲した鋼板を挿入して耐震補強を試みたことも、施工こそは難工事になりますが、コンクリートの重厚さに比して表情を違えるソリッドな建築がオーバーレイするようなデザインとなって建ち表れるものとなりました。既存建築の造形を巧みに活かして新旧を対比的に取り扱う空間づくりを試みており、この内部空間は実際に体験したくなる斬新でかつ魅力的なデザインになっているように映ります。

コメント