千葉県立中央図書館の保存活用設計提案_2024年度 / レガシー
千葉工業大学大学院(建築学専攻)「建築保存改修設計特論/2024年度」で取り組んだ千葉県立中央図書館の保存活用設計提案の課題におけるレガシーの提案内容です。
課題概要と2024年度の傾向についてご覧になられていない方は、まずはコチラを参照いただければと思います。
[ 保存活用設計提案の概要 ]
プレグリッドシステムの架構のみを残すレガシーというテーマに対して、ここに「個性的な体験を生む公園」(荒川修作「養老天命反転地」やイサム・ノグチ「モエレ沼公園」を想起するとイメージが容易になるでしょうか)を提案されました。
千葉県立中央図書館ひいては「千葉文化の森」全体に及んで点在する円形ないし曲面の造形に糸口を求め、これこそが大髙正人の群造形を表徴するデザインとして仮定し、円を基本造形として3名のチームメンバーがそれぞれデザインした「体験装置」をプレグリッドシステムの内部もしくは周辺に並べて全体を構成しています。
[ 総 評 ]
プレグリッドシステムをパーゴラに見立てランドスケープにする提案は過去にも見られてきたもので、レガシーのテーマにおける1つの典型的な解法になるものだろうと思います。
本提案が過去の作品と大きく違えるのは、形態ないしプログラムからアプローチするのが多い中で、大髙正人のテキストから設計理念を読み解いて思想から本質に迫ることを試みたことでしょう(歴史的建造物の保存継承において望ましいアプローチといえるものです)
それを通じて着目されたのが「円」の造形で、これこそが大髙の造形上の根幹として位置づけ、プレグリッドシステムを支持する「土台」たるラーメン構造のフレームに多く円形をあしらえていることから、これにも価値を見出すことこそが千葉県立中央図書館における大髙の建築思想を継承するものと説きました。円形を多用していることは理解してきましたが、その意味を深く考えるまでには及べてこなかったこともあり…この鋭い指摘には驚かされました。
レガシーというテーマは、柱梁のストラクチャーだけにするため厳密には歴史的建造物保存とは言い難い性格をもつものですが、挿入された「体験装置」が一定期間公園として利用され、状況が整ってから新たな活用方法をもって再生できるに及んだ時に「体験装置」を取り除いて原状回帰できる計画というのは(ただし書庫だけは解体)、実現性の観点でも評価できるように考えます。新境地を拓いた保存改修設計提案として出色の作品になったのではないでしょうか。
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